動画を撮影する上で欠かせないアイテムの一つが三脚です。
最近はレンズやカメラの手ブレ補正が進化しているので、「しっかりホールドしていれば手持ちでも大丈夫」と思われることもあるようですが、三脚の役割は手ブレ防止だけではありません。
また写真撮影用の三脚を動画用に使う方もいますが、写真と動画では三脚に求められる機能も異なります。
今回は三脚の基本などについて解説し、おすすめの動画用三脚も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
三脚とは
三脚は脚の部分と雲台の2つからできており、それぞれ用途に向いたものを組み合わせて使います。
三脚を使う目的の一つに手ブレの防止があり、終始手持ちで撮影された動画には安定感がなく、とても見苦しい映像になってしまいます。
意図的にブレさせて臨場感を演出することもありますが、そのシーンが長く続くと見る側は疲れてしまいます。
また動画そのものが傾いていると素人感が丸出しになり、やはり見る側にとってもストレスな映像になってしまいます。
つまり手ブレ防止以外に水平・垂直をきちんと出すことも三脚の役割となっています。
動画には専用の三脚があるため、購入時に誤った選択をしないよう、写真用・動画用それぞれの特徴を理解しておきましょう。
写真用の三脚
写真用(スチル撮影用)の三脚は長時間露光が必要なシーンでよく使われます。
花火や星景・天体写真は三脚があればこそ撮影可能であり、手持ちでは派手なブレが発生してしまいます。
また手ブレにシビアなマクロ撮影用にもよく使われますし、きちんとした構図を決める際にも三脚があればかなり楽になります。
つまり、しっかり固定できることが写真用三脚に求められる機能であり、一度構図が決まればそう簡単に動いてもらっては困るということです。
動画用の三脚
動画撮影の場合、被写体の動きに合わせてカメラの向きを変えたり、被写体が少しずつ画面に表れてくるような演出をする場合もあります。
つまり三脚に取り付けた状態で上下左右に動かす必要があるため、写真用三脚のようにガッチリと固定することはありません。
基本的には雲台に取り付けた状態で水平をキープし、横方向に向きを変える「パン」や、縦方向の「チルト」の動きで被写体を追いかけることになります。
上下左右に動かすだけなら写真用の三脚でもできますが、ネジを緩めた状態では動きに全く抵抗がないので、パンやチルトの動きにバラつきが出てしまいます。
動画用の三脚は雲台が油圧式になっているため適度な抵抗があり、パン&チルトの動きが急に早くなったり遅くなったりといったバラつきが出ないようになっています。
種類によっては油圧のレベルを調整できるものもあり、固めに設定するとモーター制御しているような滑らかな動きになります。
よく分からないうちは写真用の2wayや3way三脚と間違えそうになるので注意してください。
三脚の種類
写真用三脚には自由雲台や3way雲台、最近ではジンバル式の雲台などもありますが、動画用三脚の場合はパンハンドル(持ち手)付きのビデオ雲台一択といってよいでしょう。
後は雲台の機能によって種類が分かれます。
脚の部分は強度や素材、長さなどによって種類が分かれるので、雲台と脚の組み合わせから購入しやすい入門用三脚、少し高価にはなりますが機能性の高い三脚の2種類を紹介します。
入門用の動画用三脚
数千円から1万円前後で購入できる三脚であり、雲台と脚がセットになっているタイプです。
安価とはいえ多機能なタイプもあるので、初めて三脚を購入する場合はチェックしておかれることをおすすめします。
脚の特徴
脚の素材にはアルミがよく使われていますが、最近はカーボン素材も1万円前後で購入できるようになっています。
脚の固定にはナット式やレバー式のロック方法があり、ナット式は脚の継ぎ目部分を回転させることでロックや解除を行い、レバー式はレバーの開閉でロックと解除を行います。
どちらも一長一短あるので好みで選択することになりますが、最近はロックや解除が一発操作になっているものが増えているので、操作性についてはあまり大きな差がないといえます。
ナット式はしっかり固定されているかどうか見た目では分からないため、1カ所でも緩んでいると撮影中にズルズルと傾いてしまうことがあります。
レバー式はロック状態が直ぐに分かるので安心ですが、乱暴に扱ってレバー部分をぶつけてしまうと破損する可能性もあります。
またレバーが緩んできたらレンチで締め直すこともできますが、安価なものはボルト式になっていないので、一度緩んでしまうとそこで寿命ということになります。
テープ止めするなど強引な方法もありますが、効率や見た目、安定性を考えるとやるべきではないでしょう。
雲台の特徴
比較的安価なものでも動画用の雲台は油圧式になっているので、パン&チルトの動きはとてもスムースです。
素材の大部分がプラスチックなので耐久性は高くありませんが、その分軽量化に繋がっています。
シンプルな構造なので油圧の調整機能はなく、パン&チルトの可動域調整もできないものが殆どです。
また脚の部分を含め、小型~中型サイズになるので重い機材のセットには向いていません。
雲台には水平器が付いていることが多く(脚側または両方に付いている場合もあります)、カメラの水平位置を決める際には役立ちますが、三脚の設置場所に傾斜がある場合、脚の伸縮による微調整で水平を確保することになります。
実はこの作業がかなり手間であり、カメラに水平器の機能があれば、三脚よりカメラのバックモニターを見ながら調整した方が効率的です。
高機能な動画用三脚
高機能・低機能といった明確な線引きがあるわけではありませんが、価格帯としては3万円前後から「あると便利」な機能が充実し、ハイアマチュアのニーズを満たす三脚になってきます。
完全なプロ仕様になると安くても10万円前後の価格になります。
脚の特徴
脚の素材はアルミやカーボンが主流ですが、高価なものは殆どカーボン製となっています。
油圧式雲台でカメラを動かす際、横方向へのスライドは脚部分にも力が伝わるため剛性はかなり高くなっており、三脚全体のねじれ防止用にそれぞれの脚が2本チューブになっているものもあります。
また脚の先端はゴム製ですが、風の影響を受ける野外撮影などでグラつくことがないよう、スパイク状の突起を出し入れできるようにもなっています。
ローポジションの撮影に対応したものは脚がほぼ水平に開くようになっており、真冬の取扱いでも冷たくないようウレタン素材を巻き付けるなど、様々な撮影シーンを想定した工夫を凝らしています。
雲台の特徴
高機能な三脚では雲台の底部が自由雲台(ボール雲台)のようになっており、雲台のみで水平を調整することができます。
脚の伸縮による調整に比べて操作も楽なので、ストレスはかなり軽減されます。
またカウンターバランスを調整できる点も高機能三脚の特徴です。
例えば上方向にチルトしたときに手を離すと、カメラは自重でじわじわと下向きに下がってきますが、カウンターバランスを固めに調整すると手を放してもその位置でピタっと止まってくれます。
力を加えればまた動き始めるので、チルトの動きを滑らかにし、表現の幅を広げることができます。横方向へのパンも抵抗を調整できるので、被写体に合わせた素早い動き、じっくりとスライドさせる動き、どちらもカクカクしないスムースな撮影ができるようになっています。
雲台の素材もマグネシウム合金など堅牢かつ軽量なものが多く、スタジオから山岳までカバーできるタフなつくりになっています。
動画撮影でおすすめの三脚
動画用三脚は写真用に比べて価格の幅が広く、プロ仕様には100万円クラスもありますが、脚をしっかり固定し、雲台をスムースに動かすという基本機能はどのタイプにも共通しています。
今回は入門用としておすすめできる三脚、少しグレードを上げた高機能三脚の2種類を紹介します。
GX 6400 VIDEO
5,000円台で購入できる低価格モデルですが、機能はかなり充実しています。
脚部分はアルミ素材でできており、扱いやすいレバー式のロック機構になっています。
3本の脚はステーで連結されているので全て均等な角度で開閉し、ステーストッパーでしっかり止めておくこともできます。
このクラスの三脚はエレベーターの上下動を制御できないものが殆どであり、うっかりカメラをセットしたままロック解除すると、ストンっ!という感じでエレベーターが落下します。
しかしGX 6400 VIDEOはエレベーターの固さ調整ができるのでこのような心配はなく、衝撃に弱いカメラの保護も考慮されています。
油圧を変更するトルク制御の機能はありませんが、パン&チルトの動きもスムースであり、撮影スタイルに応じてパンハンドルの角度や位置を変えることができます。
晴天の野外など、明るい場所の撮影ではバックモニターが暗くなるため、EVF(電子ビューファインダー)に切り替えたくなることもありますが、雲台の向きによってはパンハンドルが邪魔になってしまいます。パンハンドルの角度を変えたり反対側へ着け替えができるのはかなり便利な機能です。
エレベーターを伸ばしきった状態で約160センチなので、高さとしては少し物足りない感じもしますが、雲台が取り外しできるため、雲台と脚の間に別売りのポールを装着して2メートル以上の高さにすることもできます。
雲台の変更で写真用にもコンバートできるので、拡張性の高さも魅力といえます。
低価格でも基本機能がしっかりしていれば、いずれハイスペックモデルにグレードアップする際、不足している部分がはっきり見えてきます。
何の機能を充実させたいのか明確になれば、無駄にオーバースペックな三脚を買うこともなくなるので、入門用としてはかなりおすすめな三脚です。
miliboo MTT701B
価格は4万円台なので少々高めですが、ルックス・機能ともに本格的な動画用三脚となります。
脚部は頑丈&軽量なカーボン製であり、レッグウォーマーが全ての脚についているので真冬の撮影でも冷たさを感じることがありません。
脚の可動域も広く、最大75℃まで開くため最低高40センチまで下げることができローポジションの撮影にも対応しています。
ロックの機構はレバー式なので伸縮の操作は簡単であり、緩んできた場合には締め直しもできる仕様になっています。
接地部分はゴム底とスパイク石突を切り替えることができます。
野外撮影ではスパイク石突がかなり役に立ち、花火大会など周囲に人が多い場所では三脚に当たったり足を引っかけられることもあります。
ゴム底では三脚ごと簡単にズレてしまうため、しっかり構図を決めていても最初からやり直しということもありますが、スパイク石突であれば接地面はズレず、軽い振動だけで済む場合もあります。
耐荷重は10キロまであるのでかなり重い機材を載せることができ、カウンターバランス機能があるため重量級の機材であっても自重による傾きを防止することができます。
また雲台を外した脚部だけの耐荷重は25キロなので、安定感を高める三脚用ウェイトも問題なく取り付けることができます。
もちろん横方向への動きにもトルク調整ができるため、高機能モデルならではのスムースなパン&チルトが可能となっています。
ボール雲台タイプなので水平出しの操作も楽であり、クイックシューも本格的なムービーカメラ用になっているためプロ用機材でも問題なくマウントすることができます。
パンハンドルも角度や位置を変更可能であり、動画用三脚に必要な機能は殆ど揃っていると言ってもよいでしょう。
ガンメタルやアクセントになるレッドなど配色のセンスもよく、所有欲も十分に満たしてくれる三脚といえます。
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まとめ
写真、動画ともに共通しますが、撮影をし始めたばかりの頃は三脚の重要性に気付いていないことが多く、機能などを確認せずに「とりあえずの1本」を買ってしまうケースが多いようです。
動画撮影用に写真用三脚を買ってしまうとカメラ固定の撮影しかできず、無理矢理パン&チルトをしても格好悪い動画にしかなりません。
動画撮影には必ず動画専用三脚を購入しておきましょう。
もし撮影の合間に写真を撮りたくなったとしても、動画三脚であれば写真用の代用として使うことができます。