人物撮影といえば「単焦点レンズが定番」と考える方が多いようです。
しかし一定の条件を満たしていればズームレンズもおすすめであり、どちらも狭い部屋の中で実力を発揮できるレンズです。
一定の条件とは「明るさ」や「焦点距離(画角)」であり、比較的明るいレンズの多い単焦点でも画角の狭いものは室内撮影に向きません。
またズームレンズを選ぶ際にも「明るさ」と「焦点距離(画角)」が重要になります。
明るくて広範囲を撮影できるのであれば単焦点・ズームのどちらでもOKということになりますが、画質や扱いやすさに違いはあるのでしょうか?
さっそく室内撮影に適した単焦点レンズ、ズームレンズそれぞれの違いをみていきましょう。
目次
単焦点レンズとズームレンズ
室内撮影は晴天の野外と比べてかなり暗く、被写体との距離も制限(短くなる)されてしまいます。
このような条件に適したレンズといえば、明るく広範囲を写せるレンズにということになり、単焦点レンズや広角ズームレンズがおすすめといえます。
しかし両者ともにレンズとしての特性が違うので、メリットやデメリットを理解し、特性を十分に活かすことが重要となります。
単焦点レンズ
単焦点レンズはその名のとおり焦点距離が固定されているレンズです。
明るいレンズの代名詞でもあり、ズーム機能がないため構造も比較的単純なものとなっています。
「単焦点レンズ=明るいレンズ」という訳ではありませんが、シンプルな設計上、明るいレンズが多くなっています。
メリット
単焦点レンズのメリットは大きく2つあり、1つ目は簡単に「ボケ」を演出できる点です。
レンズの絞りを開放(F値を小さくする)ことで被写界深度が浅くなり、人物はくっきりと鮮明に写し出し、背景にはふんわりとしたボケを出すことができます。
女性に人気の写真表現である「玉ボケ」を出しやすいのも単焦点レンズの特徴です。
2つ目のメリットは明るさであり、暗い場所での撮影や動きのある被写体に強い点です。
わずかな時間でも光を多く採り込めるため、夕暮れ時や室内でも明るい写真を撮ることができ、シャッタースピードを上げても明るさを確保できるので、動きのある被写体でもブレない撮影が可能となっています。
F値で表すとF1.2~F2.8あたりが明るいレンズであり、中間的なF1.8のレンズは価格的にも安く人気となっています。
また、単焦点レンズは固定された焦点距離に特化しているため、他のレンズに比べて描写性能が高いともいわれています。
デメリット
単焦点レンズのデメリットは焦点距離にあり、メリットと表裏一体になっています。
焦点距離によって画角(写真に収めることのできる範囲)も決まってしまうため、広さの限られた室内では「全身が収まりきらない」といったことも出てくるでしょう。
部屋の広さ(被写体までの距離)に応じて50mmや35mm、28mmといったレンズを用意するのも一つの手段ですが、コストもかかりますし、レンズ交換をしている間にシャッターチャンスを逃してしまう可能性もあります。
一つの焦点距離に特化している点がメリットでもあり、デメリットにもなっています。
ズームレンズ
望遠レンズと混同されがちなズームレンズですが、望遠レンズは遠くのものを大きく写すことに特化したレンズであり、画角も狭く焦点距離も長くなっています。
ズームレンズは単に焦点距離を変更できるレンズを指すため、画角の広いレンズもあり、望遠機能を備えた望遠ズームというレンズもあります。
メリット
ズームレンズのメリットは焦点距離が可変であることです。
レンズのズームリングを回すことで被写体に寄ったり離れたりできるため、ズームレンズ1本で様々な画角の撮影をすることができます。
胸元から上を撮影するバストショットや全身撮影までこなせるため、室内撮影でも十分に活躍してくれるレンズです。
レンズ交換の手間も省けるため、シャッターチャンスを逃しにくい点もズームレンズのメリットです。
狭い室内では広角ズームがおすすめであり、ワイド端(レンズの広角側)が24mm程度あれば6畳間の広さでも背景やモデルの全身を写すことができます。
デメリット
ズームレンズのデメリットは、単焦点に比べわずかに画質が劣ってしまう点です。
焦点距離を変えられる点は魅力ですが、設計上どの焦点距離でも均一な画質を保つことが難しく、歪みや滲みなど「収差」と呼ばれる現象が発生することもあります。
またレンズの設計上、単焦点レンズよりも暗くなってしまうため、写真全体が暗くなったり動くものに弱いといったデメリットもあります。
ただし開放絞り値がF2.8など明るめのレンズもあり、広角域をカバーできるレンズであれば室内撮影にも十分対応できます。
レンズの種類
レンズの種類は様々ですが、よく使われるものには「標準レンズ」「広角レンズ」「望遠レンズ」の3種類があります。
それぞれの特徴などを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
標準レンズ
標準レンズとは人間の視角(視野)に近いレンズを指し、焦点距離50mm前後のレンズを標準レンズと呼んでいます。
また人によっては35mmレンズも標準レンズとしている場合があります。
特徴
標準レンズは様々な用途に使えますが、ポートレート写真やスナップ写真などで使われることの多いレンズです。
被写体までの距離が近くても撮影できるため、レストランの料理などいわゆる「ブツ(物)撮り」にもよく使われています。
カメラとセットで販売される「キットレンズ」にも標準レンズは多く、被写体との距離感をつかむ練習にもなるため入門用レンズといわれることもあります。
広角レンズ
広角レンズはその名のとおり、より広い範囲を撮影できるレンズです。
画角の広いレンズともいいますが、35mm以下の焦点距離であれば広角レンズとしてカテゴライズされます。
室内撮影にも十分対応できるレンズですが、雄大な自然風景を撮影するなど登山や海外旅行の際にもよく使われるレンズです。
ハメ撮りの場合は、相手との距離が近い場合が多いため、広角レンズはレンズ選びの有力候補となるでしょう。
特徴
広角レンズでは手前側のものが大きく、奥側のものが小さく写るため、遠近感のある撮影が可能です。
「ん?それって当たり前じゃない?」と思われるかもしれませんが、標準レンズと比べると遠近感の差がはっきりと分かります。
画面の端に写り込んだものは大きさが強調されるため、パースを活かした奥行のある写真も撮ることができます。
いわゆる「ダイナミックな絵」を撮りやすいのが広角レンズです。
望遠レンズ
望遠レンズを分かりやすくいうと「望遠鏡のようなレンズ」ということになり、遠くのものを大きく写せるレンズです。
筐体が長く重量もあるため手持ち撮影ではブレが起きやすく、三脚と合わせて使うことが多いレンズです。
特徴
望遠レンズは撮り方次第で色々な効果を出すことができます。
遠くのものを大きく撮影できるため野鳥撮影やスポーツシーン、航空機などの撮影にも向いています。
望遠レンズ独特の圧縮効果で手前側と奥側の被写体を同じような大きさにすることもできますし、中望遠域では背景のボケも表現することが可能です。
望遠機能をもったズームレンズには28mm-300mmといった広範囲をカバーできるものもあり、あまり多くのレンズを持ち歩きたくない場合にはとても便利です。
おすすめの広角レンズ
ここまでで、ハメ撮りには広角レンズが使いやすいことがお分かりいただけたかと思います。
広角レンズは単焦点とズームレンズの2種類に分けられます。
特にF2.8通し(どの焦点距離でもF2.8)の広角ズームは「大三元」と呼ばれるレンズの一つであり、撮影の幅広さや描写力の高さから人気のレンズとなっています。
具体的に広角レンズにはどのような商品があるか見ていきましょう。
Nikon・AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
抜群の描写力が高く評価されている広角レンズ(広角ズーム)です。
発売は10年近く前になるため手ブレ補正機能は付いていませんが、完成度の高さから今でもファンの多いレンズです。
前玉が飛び出しているためフィルターを付けることができず、大きく重いため扱いやすいレンズとはいえませんが、画質に関しては今でもトップクラスといえるでしょう。
Sony・SEL1635GM (FE 16-35mm F2.8 GM)
ソニーの広角ズームレンズであり、他社と比較して小型・軽量な設計になっています。
16mmから35mmまで描写が安定しており、11枚の絞り羽根により綺麗な玉ボケを描くことができます。
室内はもちろん野外の風景撮影にも力を発揮しますが、明るい広角レンズなので星空(星景)写真などにも適しています。
Canon・EF24mm F2.8 IS USM
販売から8年近く経つ単焦点レンズですが、扱いやすい画角は今でも人気です。
手ブレ補正機能があるため手持ちや室内でも安定した撮影ができ、キャノンのお家芸でもあるオートフォーカスの早さも魅力となっています。
中古ではAクラスの良品でも5万円代前半であり、お試し用の単焦点レンズとしてもおすすめできます。
FUJIFILM・XF23mmF1.4 R
滑らかなボケ味が魅力の単焦点レンズであり、歪曲収差が少ないため精緻かつ自然な描写を得意としています。
被写体の質感表現にも優れており、人物撮影では肌や目、髪の毛といったそれぞれのパーツを自然な風合いで表現することができます。
オートフォーカスの速度が遅いため動きの速いものには向いていませんが、室内でのブツ撮りや人物撮影には十分に活躍してくれるでしょう。
もちろん野外でのスナップやポートレート写真にも最適なレンズです。
レンズを選ぶ際の注意点
レンズを選ぶ際は「何を撮影するのか(被写体)」「どう撮影するのか(撮影方法)」の2点を意識してください。
何をどう表現したいかが決まれば、自ずとレンズの選択も絞り込まれてきます。
レンズ選びの基準~何を撮影するのか(被写体)
ハメ撮りにも色々あり、こちらの意図どおりにポージングしてくれる人もいれば、動きが予測できない場合まで様々です。
明るい広角レンズであれば単焦点・ズームどちらでも撮影可能ですが、より描写にこだわる場合は「動きのあるものは単焦点」「静止状態であれば広角ズーム」と使い分けることをおすすめします。
レンズ選びの基準~どう撮影するのか(撮影方法)
撮影方法は表現方法とも結びつきます。
例えばボケ味を活かした人物撮影では単焦点レンズが有利であり、全体にピントを合わせるパンフォーカスでは広角ズームの方が扱いやすくなります。
人物の特徴や雰囲気を前面に出す場合は単焦点レンズ、背景も含めた全体の雰囲気を表現するのであれば広角ズームといった選び方になってきます。
必ずしも「○○レンズを使わなければいけない」ということではありませんが、より柔らかさを強調したい、とにかくシャープな画像にしたいなど、好みや拘りの表現にはどのレンズが適しているか?という基準で選んでみてください。
まとめ
レンズは撮影対象や撮影方法(表現方法)によって選び方も変わりますが、狭い部屋の中では「明るさ」と「広角」は外せない条件となります。
元々暗いレンズではISO感度やシャッタースピードを調整しても限界があり、明るいレンズよりも表現の幅が狭くなってしまいます。
単焦点レンズ、広角ズームレンズ、どちらも室内撮影にはおすすめですが、最終的には好みの画質・描写ということになります。
「今一つ違いが分からない」という方はメーカーのサンプル画像や写真投稿サイトなどを参考にしてみてください。