室内でのVlog撮影やYotubeのライブ配信など、最近は動画撮影をする方が増えています。
特に男性の場合は機材や撮影方法に拘っている方が多く、趣味でありながらプロ並みの動画を撮影される方もいます。
しかしこのような動画に憧れて撮影してみると、何とも平凡な映像であったり、物足りなさを感じてしまうこともよくあります。
カメラの設定やレンズの選び方に問題がないのであれば、照明(ライト)をプラスすることで解決するかもしれません。
写真撮影と同様に光の量や向きなどをコントロールすれば、動画のクオリティは確実に上がるので、ぜひ照明について知識を深めてみましょう。
目次
なぜ照明が重要なのか
テレビや雑誌、ネットの画像などで撮影スタジオの様子を見たことはないでしょうか?
どのスタジオにも共通して照明(ライト)のセットが置かれており、「そんなにいるの?」と思ってしまいそうですが、実は撮影用の機材として必要不可欠です。
被写体に照明を当てることをライティングといいますが、雰囲気のよい動画はライティングがしっかりしており、たまたま偶然撮れてしまったということは滅多にありません。
では動画撮影におけるライティングにはどのような効果があるのでしょうか?
奥行のあるドラマチックな映像を表現できる
映画やドラマなどの映像には奥行き感がしっかりと表現されています。
また被写体の陰影もきちんと表現されているため、立体感やメリハリのあるドラマチックな映像に仕上がっています。
もともと写真や動画は2次元なので、照明を上手くコントロールしないと平坦な絵となってしまい、編集でカバーしようとしても無理が出てしまいます。
照明の役割は明るさの調整だけと思われがちですが、効果的に影をつくり出し明暗のコントラストを表現するためにも使われています。
全体の立体感だけではなく、人物の目鼻や顎のラインにも陰影はあるので、照明を使って強調すると彫りの深い表情をつくり出すこともできます。
憂いのある表情や明るく健康的な雰囲気など、モデルの雰囲気づくりにも照明の効果は絶大なので、ドラマチックな動画撮影には欠かせないアイテムといえます。
高画質の動画を撮影できる
照明で明るさを確保できれば、結果として画質の向上に繋がります。
動画撮影に不慣れな頃や、明るさが変化する撮影の場合、カメラの設定をオートモードにしておくとカメラ側で明るさを調整してくれます。
このとき、カメラ本体では明るさに応じてISO感度を自動調整していますが、暗い場所ではISO感度が高くなるためノイズが発生しやすくなります。
ノイズが発生すると動画全体のツヤ感がなくなり、ザラっとした映像になってしまいます。
照明で適度な明るさを確保すればISO感度が上がり過ぎることはなく、結果としてクオリティの高い動画に仕上がるという理屈です。
明るいレンズを用意し、絞りを開放して明るさを補うという手段もありますが、絞りの調整はボケ具合にも影響するため、メインの被写体とともにしっかり写しておきたいものでもボケてしまうことがあります。
また、自然光を使った撮影では採光のよい窓際などに場所が限定されてしまいますし、太陽からの光は明るさや色味(色相)、光の向きが一定ではありません。
よい画質の動画を安定的に撮影するためには、照明は欠かせないアイテムということになります。
照明機材のタイプ
照明機材のタイプは実に多く、価格もピンからキリまでですが、撮影の現場でよく使われているタイプは主に4種類です。
動画の雰囲気や撮影状況によって使い分けることになるので、それぞれの特徴をよく理解しておくことが重要です。
撮影用LEDライト
照明機材の主流になりつつあるのが撮影用LEDライトです。タイプは色々ありますが、最近は値段も安くなり、多機能タイプも多くなっています。
LEDライトの特徴
・省電力
・寿命が長い
・発熱量が少ない
・軽量コンパクトタイプあり
どのような動画を撮るのかによってLEDライトの選び方も変わりますが、まずは「演色性」を意識してみてください。
演色性は他の照明機材にも共通していますが、自然光に近い色をどれだけ再現できるかという指標であり、CRIという単位で表されます。
自然光を100として考えるため、CRIが100に近ければ演色性が高いということになり、95以上あればかなり優秀なライトといえます。
次に意識しておきたいのが明るさや色温度の調整機能です。
安価なライトには明るさの調整ができないものもあり、少し暗いなと思ったときは追加の照明を用意しなければなりません。
逆に明るすぎる場合はディフューザーやトレーシングペーパーなどを使って調整しますが、ダイヤルの調整一つで明るさをコントロールできれば、煩わしさからも解放されます。
また照明には青白い光やオレンジ系の光などがあり、色の違いを「色温度」と呼んでいます。
単位はケルビン(k)で表され、数字が少なければ温かみのある赤系の色、数字が多ければ冷たい感じのする青系の色ということになります。
ちなみに蛍光灯の場合は5000kであり、晴天の日陰などは8000k程度になります。オレンジ色に見えるろうそくの灯りは2000k程度になります。
色温度を調整できない(色温度が固定)ライトの場合、カラーフィルターなどを使って調整したり、色温度の違うライトを別に用意することになります。色温度を調整できれば便利なだけではなく、器材の数も必要最低限にできるので、コスト的にも安く済むことになります。
おすすめの撮影用LEDライト
FalconEyes F7 ポケットカメラライト
持ち運びに便利なコンパクトタイプであり、大きさはスマートフォンくらいになります。
CRI97の演色性であり、明るさとともに色温度も2500kから9000kまで調整可能となっています。
あらかじめ設定されたシーンモードにはパーティやキャンドル、TVスクリーンなど18種類があり、照明による様々な演出が可能となっています。
カメラのアクセサリーシューや三脚に取り付けて使うこともできますが、磁石を内蔵しているので金属部分に吸着させることもできます。
ただし磁器が他の電子機器に悪影響を及ぼす可能性もあるので、持ち運びや保管の際は別にしておいた方がよいかもしれません。
USB(Type-C)による本体への直接給電なので、内臓バッテリーを外して充電器にセットする手間もなく、光量は7割程度に落ちるものの給電中の使用も可能となっています。室内撮影の場合、スポット的なライティングに向いており、背景の演出にも使うことができます。
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Godox SL60W
見た目は本格的な照明機材ですが値段は比較的安く、拡張性の高さが特徴となっています。
AC電源により点灯しますが、海外製品なので電源が3ピンタイプなっており、変換プラグも一緒に購入することをおすすめします。
明るさ(輝度)や本体の温度が背面モニターに表示(華氏表示です)され、ダイヤル操作で明るさを調整できるようになっています。
室内で人物などを照らす場合は1台あれば十分であり、ボーエンズマウントなので様々なタイプのソフトボックスにも対応しています。
角度調整用のグリップも大きめなので緩めたり締めたりする際に力が入りやすく、操作性にもしっかり配慮されています。
付属品のリフレクターにはアンブレラ装着用の穴もあり、他の照明機材を買い足して拡張していくこともできるため、本格的な室内撮影用の照明として、最初の1台におすすめのLEDライトです。
蛍光灯
蛍光灯の照明機材は扱いやすく値段も手頃なので、今でも撮影スタジオなどでよく使われています。
蛍光灯の特徴
・省電力
・寿命が長い
・発熱量が少ない
・フリッカー現象が発生する
LEDライトほどコンパクトなものはありませんが低価格で購入できるものが多く、スタンドやソフトボックスなどがセットになって1万円以下の商品もあるので、室内撮影の入門用機材としておすすめできます。
それなりに熱は発生しますがハロゲンライトほどではなく、ほんの一瞬触れる程度であれば火傷の心配も殆どありません。
蛍光灯というと色味に温かさがなく冷たい印象になると思われがちですが、色温度の幅は意外に広く、白熱電球に近い3250kの蛍光灯もあります。
色温度を変えたい場合、電球のみを買い足しておけばよいのでコストパフォーマンスにも優れています。
室内撮影に蛍光灯を使う場合の注意点として、「フリッカー現象」への対策を考えておかなければなりません。
蛍光灯は絶え間なく連続して光っているように見えますが、実は高速で点滅を繰り返しています。
東日本では1秒間に100回、西日本は120回になり、フレームレートに対してシャッタースピードが速すぎると動画がチカチカと点滅したような状態になってしまいます。
この現象をフリッカー現象といいますが、同じ原理で光っているパソコンのモニターやテレビ画面にも発生します。
フレームレート24fpsに対してシャッタースピード1/50など、カメラ側でシャッタースピードを調整すれば解消できますが、調整機能がないコンデジやスマートフォンは蛍光灯との相性が悪いといえます。
シャッタースピードを調整できないカメラの場合、テレビ画面や蛍光灯の下で試し撮りし、フリッカー現象が起こるかどうか確認しておくことをおすすめします。
おすすめの撮影用蛍光灯
Frunsi ソフトボックス 写真照明用セット
1万円を切る価格でありながら、スタンドやソフトボックスが2セットとなるお得な照明機材です。ディフューザーや専用バッグも付属しており、高さも70cm~200cmで調整できるため、使い勝手やコストパフォーマンスにも優れています。本格的な照明機材を検討しておられる場合、まずこのセットから試してみるのもおすすめです。
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リングライト
文字どおりリング(輪)になっているライトであり、穴の部分を通してカメラをセットする仕組みになっています。蛍光灯タイプもありますが、現在はLEDのリングライトが主流となっています。
リングライトの特徴
・顔全体を明るく撮影できる
・シワなどが目立たず肌が綺麗に見える
・キャッチライト効果あり
リングライトを使った人物撮影の場合、顔全体をまんべんなく照らすため肌の色が明るくなり、小じわも目立ちにくくなります。
女性の顔をメインに上半身や胸元から上を撮影する場合に適しており、メイクなどのコスメ系動画に使われることが多くなっています。
肌の色を綺麗に表現できるメリットを活かし、最近ではネイルアートの動画に使われたり、ビデオ会議などのテレワークで使われることも増えています。
リングライト最大の特徴はキャッチライト(キャッチアイ)効果であり、人物撮影では瞳にリングライトの輪が写り込むため、生き生きとした綺麗な目を演出することができます。
反面、眼鏡やサングラスをしている場合はリングライトの光がレンズに反射してしまい、キャッチライト効果が邪魔になることもあります。ブツ撮りの際も、光沢のある材質であればリングライトの輪が表面に写り込むので、気になる場合は他の照明に切り替えた方がよいでしょう。
リングライトにはスマホ用のコンパクトなものからスタジオ用までサイズのバリエーションも多く、スタジオ用の殆どはスタンドや小型の自由雲台がセットになっています。
おすすめのリングライト】
odoee 18インチ 42W LED撮影照明用 三脚セット
ムービー専用カメラやデジタル一眼、スマートフォンも装着できるリングライトです。明るさの調整はもちろん色温度も3200kから5600kまで調整可能であり、高さも85cmから200cmまで対応しています。リモコンが付属しているので明るさの調整は手元で操作でき、自撮り用としもおすすめできるライトです。
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タングステン&ハロゲンライト
タングステンやハロゲンライトがメインの照明機材に使われることは少なくなりましたが、肌の色を綺麗に写し出してくれるため、人物撮影のみ使っている方もいるようです。
ちなみに広義にはハロゲンライトはタングステンライトの一種ということになります。
タングステン&ハロゲンライトの特徴
・演色性能が高い
・肌色の描写に優れている
・寿命の寸前まで色温度や光量が安定している
・消費電力が大きい
かつては室内撮影のメイン照明として使われていたこともありましたが、暖房器具かと思うほどの高温になり、衝撃にも弱いため使い勝手のよいライトとはいえません。
消費電力も大きく寿命も短いため、今ではデメリットばかり注目されてしまいますが、十分な明るさと肌色描写の性能は今でも高く評価されており、人物撮影のみ使用している人もいるようです。
照明機材の主流からは外れてしまいましたが、他のライトで表現する色味に納得がいかない場合、試してみる価値があるかもしれまん。
おすすめのハロゲンライト
LPL ビデオライト VL-1300 L27430
特別な機能はありませんが300Wの明るさは室内撮影に十分であり、人物撮影に適したライトです。
プロ用機材になるため武骨なデザインですが、別売りのスタンドもかなりしっかりしており、少し触れただけでぐらついてしまうようなこともありません。
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照明機材を使えないときはどうする?
室内撮影では照明機材の使用に制限がかかってしまう場合もあります。
例えば赤ちゃんやペットの動画を撮影する場合、ライトの光を嫌がってしまいよい表情をなかなか出してくれないことがありますし、カメラはOKでもフラッシュや照明機材はNGといった場所もあります。
照明機材を使えない場合、どのような撮影をしたらよいでしょうか。
太陽光
晴天時の太陽光はかなり強いので十分な明るさを確保することができます。
太陽光の入りやすい南側の部屋を使えればベストですが、日差しが強すぎると白とびが発生してしまうため、レースのカーテンなどで光を和らげるようにしてください。
また窓側をバックに撮影すると逆光になってしまい、明るい場所にも関わらず撮影対象が暗くなってしまうので注意してください。
人工的な照明のように色温度を調整できないので、意図どおりの色にならない場合はカメラ側のホワイトバランスを変更してみましょう。
室内照明や光の反射
室内照明だけでもそこそこ明るい部屋はありますが、天井から照らされていることが殆どなので、光の向きを変える必要があります。
レフ板を使って反射させれば人物の表情を明るくできるので、コンパクトに折り畳めるタイプを一つ持っておけば便利です。
ただし、下方向から反射させるとモデルの表情が怖くなってしまうので注意してください。
また室内に白いテーブルがあれば、わずかですが天板からの反射光を使えます。
同じ室内でも少し場所を変えたり、その場にあるものを上手く使えば光量の不足を補うことができます。
まとめ
殆どの室内撮影に照明機材は欠かせません。
プロはもちろん、最近ではユーチューバーなどアマチュアでさえ照明に拘っています。
ただし、いかにも「照明を使っています」と分かる動画は不自然であり、クオリティも低いものになってしまいます。
プロの中には、動画からライティングの様子が分かってしまうことを嫌う人もいるくらいなので、あくまでも「自然・普通」に見せるための補助アイテムであることを理解しておきましょう。