動画を再生したとき「あれ?なんだか暗くない?」や「明るすぎて全体が白っぽい」と思ったことはないでしょうか。
苦心して撮影した動画も明るさの調整に失敗すると取り返しがつきません。
明るすぎる動画や暗すぎる動画は編集で補正してもかなり無理が出てしまい、結果として汚い映像になってしまいます。
今回は動画撮影の際に重要な明るさのコントロールについて解説します。
目次
ISO感度とは一体なに?
夕暮れ時や室内撮影をしたとき、肉眼ではもっと明るく見えたのに動画を再生したら暗かった。こんな経験ありませんか?
光を十分に採り込めていないことが原因ですが、そんなときはISO感度の調整で映像を明るくすることができます。
写真や動画を始めたばかりの方には馴染みのない言葉ですが、ISO感度を上手く調整できれば少ない光量でも鮮明な映像を撮ることができます。
ISO感度を調整して明るく撮影
ISO感度とは光をキャッチする能力を数値化したものであり、デジタルカメラでは本体で調整可能です。
デジタル一眼ではISO感度:100あたりが初期値として設定されていますが、この数値を上げていくことで少ない光量でも明るく撮影することができます。
晴天の野外など十分な光量がある場所ではISO100のまま撮影しますが、夜の街明りの中で撮影するときにはISO3200くらいまで数値を上げていきます。
ちなみにフィルムカメラの場合、ISO感度はカメラ側ではなくフィルムの規格になります。周囲の明るさ・暗さに合わせてフィルムを使い分けるということです。
ISO感度は上げすぎに注意
ISO感度を上げるということは、電気的な処理で明るさを増幅させるということになります。
明るさの調整としては少し強引なやり方になるため、必要以上にISO感度を上げすぎると映像が荒くなってしまいます。
動画の明るさは他のパラメーターで調整し、それでも明るさが足りないときにはISO感度を上げるようにするとよいでしょう。
F値の調整で動画をドラマチックに
F値を調整すると動画の明るさやボケ具合を変えることができます。
F値はF1.8やF4.0といった数字で表されますが、数字が少ないほど動画は明るく、多ければ暗くなります。
レンズから入ってくる光の量を調整するのでノイズが出ることもなく、手軽に動画の明暗を調整できます。
F値は絞りで変化する
F値は「絞り」によって変化し、レンズ内部の絞り羽根を絞ると光の通り道が狭くなり、F値は大きくなります。
反対に絞りを開けると光の通り道が広がり、F値が小さくなるとともに動画も明るくなります。
晴天の野外ではF値を大きく(絞る)して必要以上に明るくならないよう調整し、曇りの日や室内などではF値を小さく(開放)して採り込める光の量を多くします。
F値を変えてボケをコントロール
F値を変える、つまり絞りの調整で「被写界深度」も変わります。
被写界深度とはピントが合う範囲であり、絞りを開けてF値を小さくすると被写界深度は浅くなり、背景などのボケを演出することができます。
逆に絞ってF値を大きくすると動画は暗くなりますが、パンフォーカスと呼ばれる全体にピントが合った動画になります。
暗い場所で撮影する場合、絞りを開けてF値を小さくし明るさを確保することができますが、ピントの合う範囲が狭くなる、つまり被写界深度が浅くなるためパンフォーカスのような映像は撮れなくなってしまいます。
明るさの調整に気を取られ過ぎると後で再生したときに「ここは全体にピントを合わせたかったのにボケてしまった」という結果になってしまいます。
雄大な自然をバックに人物を撮りたい場合は絞りぎみ(F値を大きく)に、背景や前景をボカして人物などをくっきり撮りたいときには開放ぎみ(F値を小さく)に調整してみてください。
シャッタースピードも明るさと密接な関係
シャッタースピードというと写真(静止画)だけに関係しそうですが、実は動画にもシャッタースピードの概念があります。
動画のなめらかさを決めるフレームレートや明るさと関係するため、どのような映像に仕上げたいかによってシャッタースピードも変わります。
動画におけるシャッタースピードの考え方
シャッタースピードの考え方は基本的に写真撮影と同じであり、シャッタースピードが早ければ採り込む光の量が少なくなるため画像は暗くなり、遅ければシャッターが開いている時間が長くなるため画像は明るくなります。
動画の場合のシャッタースピードは「フレームレートに合わせて調整する」と覚えておいてください。
動画の原理はパラパラ漫画と一緒ですが、1秒間に再生するコマ数をフレームレートによって決めていきます。
フレームレートはFPSという単位で表され、24fpsであれば1秒間に24枚の画像を連続再生しているということになります。
仮に24fpsで動画を撮影する場合、シャッタースピードはフレームレートと同じ数字またはその2倍に設定するようにしてください。
※実際に撮影する場合は2倍に設定した方が綺麗な動画になります。
24fpsと同じシャッタースピードがないので1/25、または倍の50に合わせます。30fpsのであればシャッタースピードを1/60にするということです。
動画の場合、シャッタースピードをフレームレート以下の数値にすることはありませんが、上限は決まっていないのでいくらでも上げる(速くする)ことはできます。
しかしシャッタースピードを上げ過ぎると肉眼で見た時のような残像感がなくなり、目が疲れてしまうようなカクカクした映像になってしまいます。
簡単にいうと「瞬間瞬間を捉えすぎ」ということになり、程よくブレていた方が自然な動画になるということです。
分かりやすいのはパソコンのモニターを撮影したときであり、シャッタースピードが速いと画面がチカチカと点滅する「フリッカー現象」が起きます。
東日本と西日本ではシャッタースピードが違う?
フリッカー現象は蛍光灯の明りでも発生します。原理はモニターと同じですが、蛍光灯は東日本で1秒間に100回、西日本では1秒間に120回点滅しており、周波数(ヘルツ/hz)が関係しています。シャッタースピードが1/100または1/120以上だとチラつきを捉えてしまうので注意してください。
ちなみに富士川(静岡県)と糸魚川(新潟県)の境で東西に分かれているようですが、境界周辺は周波数の混在する地域があるようです。
最適なシャッタースピードにしたら明るすぎる!?
動画撮影は24fpsまたは30fpsくらいが丁度よいフレームレートですが、実際に1/25や1/50、1/30や1/60はシャッタースピードとしてかなり遅い設定です。
写真撮影をしている方には分かりやすいと思いますが、晴天の野外でシャッタースピード1/25にすると光量が多すぎて真っ白な写真になってしまいます。
1/60でも白飛びが起きてしまい、まともな映像にはならないでしょう。
ということで、少し暗くするためにF値を大きく(絞る)してバランスをとるようになります。
「ボケ感を出したいからF値は小さいままにしておきたい」ということであれば、NDフィルターを使ってみてください。
NDフィルターはレンズ用のサングラスのようななもので、レンズ先端に取り付けて使います。
NDフィルターは数字が増えるほど暗くなり、ND4であれば光量を1/4にし、ND8は1/8まで光量を押さえてくれます。
重ね付けもできますし、値段は高価ですが可変式フィルターがあれば1枚で光量を調整できます。
ただしレンズの径と合わなければ装着できないので、サイズだけは間違わないようにしてください。
適正露出を目指そう
写真や動画では露出が重要とよく言われます。
露出とは「明るさ」のことであり、暗すぎても明るすぎてもNGということになります。
意図的に明暗を調整することもありますが、基本的には肉眼で見たときの明るさが理想となります。
では適正な露出はどのようにコントロールするのでしょうか?
露出を決める3要素
露出を決める要素は3つあり、実はここまでに解説してきたISO感度、F値、シャッタースピードです。
必ずという訳ではありませんが、明るさの決め方は以下の順で考えてみるのがおすすめです。
①シャッタースピード(フレームレート)
まず動画のなめらかさや見やすさに関係するフレームレートとシャッタースピードを決めます。
②F値(状況に応じてNDフィルター)
映像をカメラのバックモニターで確認し、暗い場合はF値を小さく、明るい場合はF値を大きくします。状況に応じてNDフィルターを使うのもよいでしょう。
③ISO感度の調整
ISO感度の調整は最後にしておいてください。
シャッタースピードやF値はレンズから入る光量の調整ですが、ISO感度は電気的な処理なのでノイズの発生原因にもなります。
他の2要素の調整ではどうしようもないときにISO感度を上げるようにしてください。
適正露出はマニュアル操作が基本
適正露出には明確な決まりがないため、自分で「この明るさがベスト」と納得できればOKです。
しかし撮影モードをカメラ任せのオートにしていると意図どおりの露出にならない場合があります。
デジタル一眼には露出補正機能もありますが、基本的にはISO感度、F値、シャッタースピードの3要素を手動(マニュアル操作)で調整した方が綺麗な動画になります。
写真撮影と同じく動画でも「光を読む」ことが重要であり、明るさを意図どおりにコントロールできればかなりのレベルアップになります。
まとめ
写真撮影と動画には共通部分もあり、ISO感度やF値は馴染みやすい部分ですが、シャッタースピードの概念は少し分かりにくいかもしれません。
しかし思いどおりの露出にできれば後の編集もかなり楽になり、色調などを変えてもあまり不自然にはなりません。ジンバルを使ったブレのない動画など色々な手法が流行っていますが、まずは適正露出にできるよう頑張ってみてください。