ハメ撮り動画の編集のために、パソコンや動画編集ソフトを揃えて動画編集を始めた人であれば『カラーグレーディング』という単語を見たことがある方も多いと思います。
しかし、「なんとなく難しそう」という理由で詳しく調べたことのない方もいるのではないでしょうか。
この記事ではそのカラーグレーディングに関して、カラーグレーディングとは何かという解説から、カラーグレーディングの基礎的なテクニックを解説していきたいと思います。
目次
カラーグレーディングとは
カラーグレーディングについて調べると必ずといっていいほど目にする単語に『カラーコレクション』というテクニックがあります。
両者はパソコンの動画編集ソフトで編集することが当たり前になった今となっては同じようなとらえ方をされていますが、本来の用途は違うものです。
カラーコレクションは「明らかにカットの見た目がおかしい」状態を修正する工程で、例えば同じシーン(場所)で撮影したカットでも、時間や日程が違うと明るさや色味に違いが出た場合に、それらを調整するのがカラーコレクションです。
カラーグレーディングはもっと踏み込んだ色の調整の工程で、夕焼けの色をもっと赤くしたり海の色を青くするような演出的な要素を含むものです。
カラーグレーディングを必要とするシチュエーションですが、時間と手間がかかる作業のため、ニュースや報道などのスピードが求められる動画編集の現場ではそれほど使われず、どちらかと言えば映画やプロモーションビデオなどの『作品』とされるような動画編集の現場において重要になるテクニックです。
次のセクションでは、実際の現場でのカラーグレーディング作業に、どんな動画編集ソフトが使用されているのかをご紹介いたします。
カラーグレーディングに適した動画編集ソフトは?
このセクションでは、カラーグレーディングを行えるソフトをいくつか紹介します。
カラーグレーディングを行えるソフト
Adobe Premiere Pro
(Windows, Mac両対応)
Apple Final Cut Pro
(Macのみ対応)
Grass Valley EDIUS X
(Windowsのみ対応)
Blackmagic Design DaVinci Resolve
(Windows, Mac両対応)
『Adobe Premiere Pro』、『Apple Final Cut Pro』、『Grass Valley EDIUS X』は機能的には横並びですが、最後の『DaVinci Resolve』だけはカラーグレーディングの機能においてはかなり豊富な機能が搭載されています。
ハリウッドをはじめとした映画の現場のカラーグレーディングには『DaVinci Resolve』がスタンダードとなりつつあるくらいです。
例えば、カット編集は慣れている『Adobe Premiere Pro』で行った後にカラーグレーディングの作業だけを『DaVinci Resolve』で仕上げるというパターンもよく見かけます。
逆に言うと『DaVinci Resolve』は機能が豊富な分、パラメーターなどが多くあるため初めて触る方は多少とっつきづらい感覚があるかも知れません。
次のセクションでは、具体的にカラーグレーディング作業にはどのようなステップがあるのかを解説していきます。
カラーグレーディングのステップとテクニック
カラーグレーディングを行うステップとしては大きくまとめて2段階あります。それぞれ『プライマリー(第一段階)』と『セカンダリー(第二段階)』にわけて調整の作業をするのが一般的です。
各項目の詳細は後述しますが、プライマリーは主に『コントラスト』と『ホワイトバランス』と『彩度』の調整、セカンダリーは主に『マスク』と『カーブ』が含まれます。
プライマリーは画面全体に対して調整されるステップで、セカンダリーは画面の一部分(人物だけなど)に対して調整されるステップとなります。
また、これらは絶対に調整しなくてはいけないわけではなく、必要なときに必要な分だけ調整すれば良いものとしてとらえておいてください。
次のセクションからは、プライマリーとセカンダリーのそれぞれの調整項目を解説していきます。
コントラストの調整
まずはプライマリーの調整項目の1つめです。
コントラストとは、英語の単語だと『contrast』と記述され、『対比』と訳される単語です。
カラーグレーディングにおいてのコントラストは、明暗の差や色彩の対比を表します。
コントラストの高い動画は硬くメリハリのある動画になり、逆にコントラストの低い動画は柔らかくメリハリのない動画となります。
必ずしもコントラストは高ければ良いというわけではなく、例えば女性がメインの被写体であればコントラストを少し下げることで柔らかい印象の動画に調整することが可能です。
全ての調整項目において言えることですが、過度なパラメーターの変更は動画の破綻を招く恐れがあるため、ほどほどにとどめておくことが良いでしょう。
ホワイトバランスの調整
ホワイトバランスは文字通りに、「白いものを白く見えるように」調整するパラメーターです。
『色温度』とも呼ばれ、『ケルビン』という単位で色温度を表します。値が高くなれば青みが上がり、低くなれば赤みが上がります。
デジタル一眼レフ等のカメラを所有している方は詳しいかもしれませんが、屋外の場合は天気に左右され、屋内の場合は照明に左右されて、撮影した映像が実際の見た目と違うというケースが良く起こります。
この色のずれをホワイトバランスのパラメーターで調整していきます。
特に人物の肌の色においてはホワイトバランスは重要なパラメーターになります。
ただし、夕焼けのカットなどはそのままの方が奇麗な場合もありますので、必ずしも調整が必要というわけではありません。
彩度の調整
彩度は『サチュレーション』とも呼ばれますが、色の濃さを表す数値です。
彩度を上げると動画全体の色彩が濃くなり、逆に完全に下げるとモノクロになります。
海や空、紅葉などのシーンの印象を調整したい場合などに良く使われるパラメーターです。
彩度を上げると鮮やかな印象にはなりますが、上げすぎると色がつぶれてしまうこともあるのであくまで補正という意味合いは忘れないようにしましょう。
マスク
ここからはセカンダリーの調整項目となります。
PhotoshopやIllustratorに詳しい方にはおなじみの機能ですが、『マスク』という範囲選択機能を使用して動画の一部分にだけカラーグレーディングを行うことが可能です。
もちろん動画は静止画と違い動きがあるので、『トラッキング』という機能を使ってマスクの選択範囲を追従させて調整を行います。
以前は1コマずつトラッキングをして範囲の選択を行っていましたが、最近のソフトは機能の向上により、全自動とはいかないまでも半自動で行えるようになりとても便利になりました。
このマスクの範囲選択した部分の境界線をぼかす機能があり、それを使用することで調整された部分とそうでない部分の違和感を減らすことが出来ます。
とあるカットの人物の肌の質感だけを調整したいが、他の部分には調整を加えたくない場合などにとても役に立つテクニックです。
カーブ
セカンダリーにおけるカーブですが、『カーブ』とひとつの単語に集約してしまいましたが、これはプライマリーの、コントラスト、ホワイトバランス、彩度などをマスクで範囲選択した部分にだけ再調整するというとらえ方をしていただければ問題ありません。
プライマリーで下地を作り、セカンダリーで仕上げという流れです。
その他のカラーグレーディングの調整項目
細かい機能としては、まず『ノイズ除去』があげられます。
特にハメ撮り動画は暗い場所や光量が十分でない場所で撮影されることも多いです。
そのような時に撮影時のISO(感度)が高くした場合は動画にノイズが入ることが良くありますが、カラーグレーディングの際にこれらのノイズを減らす処理を行うことができます。
ただし、ノイズ除去に関しては、パソコンの処理的に負荷が高い場合が多いため、あまりに動作が重いと感じた場合は、手を加えないこともあります。
また、ハイライト(明るい部分)を抑えたり、シャドウ(暗い部分)を持ち上げる調整をすることもあります。
白飛びしていたり黒つぶれしているカットに有効な調整方法です。
これもPhotoshopなどでよくある調整項目ですが、『シャープネス』という輪郭の補整機能があり、このパラメーターを上げると動画全体がくっきりとします。
シャープネスを上げすぎると動画全体がつぶれたような見た目になってしまうため過度な調整は控えめにしておきましょう。
『ビネット』という、映画のフィルムカメラにあるような、画面の真ん中が一番明るく、周りを少し暗くする効果を加えることもあります。
LUTを使ったカラーグレーディング
番外編となりますが、『LUT(ルックアップテーブル)』というファイルを使用したカラーグレーディングの方法を紹介します。
LUTとは既にカラーグレーディングの情報が含まれている、いわばテンプレートのようなファイルで、これを動画編集ソフト上で任意のカットに適応することでその効果を得られるというものです。
カメラの本体を開発しているメーカーから配布されているLUTもあれば、主に海外で無料有料問わず数多くのLUTが配布(販売)されています。
ゼロの状態からカラーグレーディングをするのは敷居が高いと感じている方はまずLUTを使用したカラーグレーディングを試してみるのも良いと思います。
LUTを適応してビフォーアフターを確認しながら自分なりのカラーグレーディングの設定を模索していくのもおすすめです。
ハメ撮りにおけるカラーグレーディングの必要性
ここまで読んできた方はわかるかもしれませんが、ハメ撮りの動画編集においてカラーグレーディングは必須ではありませんが、より自分の求めている映像に近くするためにはカラーグレーディングは必要といえるでしょう。
特にハメ撮り動画は、撮影だけでなくプレイにも集中しなくてはならないため、その時の現場では完璧な色味で撮影できないこともあります。
多いのはラブホテル等の暖かい色味の照明のせいで撮影した映像もオレンジがかったものになってしまったり、光量が足りなくて映像にノイズがのってしまった時などです。
そんなときにカラーグレーディングの方法を覚えておけば、後から自分好みの映像に仕上げることも可能になります。
また、あえて映画風に編集してみたり、柔らかい印象の映像にしてみたり、手を加えてみることで撮影したままの映像とは違う印象の映像を作り上げることもできます。
自分のお気に入りのハメ撮り映像がある場合には、カラーグレーディングに凝ってみるのも一つの楽しみ方といえます。
カラーグレーディングに必要な環境
細かい話になってしまいますが、「今自分が使っているディスプレイは正しい色を表示しているのか」という疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に民生用のパソコンのディスプレイは全く同じ型番で全く同じ設定だとしても個体差があり100%正確な色を再現できるわけではありません。経年劣化による色の変化もあります。
編集スタジオなどでは『マスターモニター』と呼ばれるとても高価なディスプレイを導入しているところがほとんどですが、個人ではなかなか手が出しづらいと思います。
そこでおすすめなのが、『キャリブレーション』という、ディスプレイごとの個体差を調整してなるべく同じ色に見えるように表示してくれる機能が搭載されているタイプのディスプレイです。
一般的なディスプレイよりは高価ですが、この機能を使用することで限りなく正確な色を再現できるため、本格的にカラーグレーディングに取り組みたい方は購入を検討してみるのも良いかもしれません。
動画編集ソフトで色の情報を確認する
ディスプレイに表示されている動画の色を自分の目で見て確認する方法以外に、各動画編集ソフトにはそれぞれ動画の明暗情報や含まれている色の情報を視覚的に確認できる『スコープ』と呼ばれるウィンドウが搭載されています。
このスコープの情報を頼りにしてカラーグレーディングの指標にするのも良いと思います。ただし、もちろん過信はしすぎないようにしましょう。
まとめ
以上、カラーグレーディングとは何かということや、ハメ撮りの動画編集で使えるカラーグレーディングの簡単なテクニックを紹介いたしました。
読むだけだと難しく感じるかもしれませんが、大事なことは自分が編集している動画をより良く見せるにはどうすればよいかということなので、それさえ見失うことがなければ後は各動画編集ソフトのコマンドやメニューを覚えるだけです。
カラーグレーディングによって動画全体の世界観をがらりと変えることができます。
動画をより印象的に見せるためにはとても大事なテクニックなので是非挑戦してみてください。