動画撮影に欠かせないアイテムといえばデジタルカメラとSDカードです。
しかしSDカードにはいくつかの種類があり、サイズや規格の違いから「どれがよいのか選び方が分からない」という方もいるのではないでしょうか。
動画撮影用のSDカードは容量と転送速度が選び方のポイントになりますが、ラベルに表示された規格の意味が分からなければ無駄な買い物になる可能性もあります。
そこで今回はSDカードの規格について解説し、動画撮影に適したSDカードの選び方を紹介します。
目次
SDカードとは
スマートフォンやデジタルカメラで撮影した動画は、多くの場合SDカードに保存されます。
記憶媒体や記録メディアとも呼ばれ、コンパクトサイズで大容量、しかも他のカードに比べて値段も安いため、事実上の世界標準になっています。ドライブレコーダーや家庭用の防犯カメラなど他の撮影器機にも採用されており、使い回しが利く点も大きなメリットです。
SDカード以外にはコンパクトフラッシュやxDカードなどがあり、いずれも優れた製品ですが、規格が古かったり独自規格のため汎用性がないなど、さまざまな理由で淘汰されています。
SDカードの種類
デジタルカメラ用やスマートフォン用など、SDカードはサイズ(縦横実寸)によって以下の3つに分けられます。
サイズ別のSDカードの種類
・SDカード(32×24mm)
・miniSDカード(21.5×20mm)
・microSDカード(15×11mm)
動画撮影などの映像機器にはSDカードがよく使われており、microSDカードはスマートフォンなどによく使われています。中間的なサイズのminiSDは徐々に減少していますが、現在でも旧機種の携帯電話などに使われています。
かつては物理的な大きさと記憶容量はほぼイコールでしたが、microSDにも大容量タイプが登場したため、記憶可能なデータ量はSDカードとほぼ同レベルになっています。miniSDやmicroSDはアダプターを使うとSDカード用のスロットにも挿入できるので、汎用性の面では小さなサイズが有利ともいえます。
なぜSDカードについて知っておく必要があるか
動画撮影用のSDカードを選ぶ際、容量を基準に考える方が多いようです。
大容量のSDカードは膨大なデータを書き込めるので便利ですが、いかに高画質でも1回あたりの撮影時間が数分であればそれほど大きな容量は必要ないでしょう。1テラバイトのSDカードでも実際に使っている容量は1/10以下という方もいますし、逆に8K動画用に32ギガバイトを購入し、直ぐに容量不足を起こしてしまう方もいます。
カメラの性能を引き出せないこともある
超高画質の4Kや8K動画を撮影する場合、5分程度の動画撮影でも数十ギガバイトに達することがあります。画質を落とせば容量不足のSDカードでも保存できますが、カメラの性能を十分に引き出せないため少々勿体ない買い物になってしまいます。
また映像が高画質になるほどSDカードの書き込み速度も重要になり、低速なカードでは書き込みが追い付かないため、録画時間が制限されてしまう場合もあります。動画だけではなく静止画の撮影でも連写が途中で止まってしまうこともあるので、SDカードは容量とともに書き込み速度にも注目して選びたいところです。
SDカードの規格
最大記憶容量や転送速度などSDカードにはさまざまな規格があり、パッケージや本体ラベルに表示されていますが、「何を意味しているのか分からない」という方も多いようです。
規格の意味さえ分かれば動画撮影に最適なSDカードを選べるため、カメラの性能を最大限に活かすことができ、コストパフォーマンスのよい買い物にもなります。
最低保証速度
SDカードには転送速度に関係する規格があり、最低保証速度についてもラベル表示されています。例えば1秒間の書き込み速度が2メガバイトの場合は最低保証速度も「2」であり、SDカードには「C」の中に数字の2を取り込んだロゴが表示されます。
最低保証速度は2006年につくられた規格ですが、SDカードは性質上、使用回数が増える度に転送速度が低下し、書き込みや読み込み速度も徐々に遅くなります。そこで「最低でもこの速度は出る」という保障が必要になり、現在では途切れることのない安定した動画撮影が可能となっています。
ただし、カードリーダーなどの性能も転送速度に影響するため、読み書きが遅いと感じてもSDカードが原因とは限りません。
スピードクラス
スピードクラスは最低保証速度と関連した規格であり、SDカードのラベルに「Class(クラス)」で表示されています。スピードクラスは4段階に分けられており、最低保証速度との関係は以下のようになっています。
・Class2:読み書きの最低保障速度が2メガバイト(MB)/秒
・Class4:読み書きの最低保障速度が4ガバイト(MB)/秒
・Class6:読み書きの最低保障速度が6ガバイト(MB)/秒
・Class10:読み書きの最低保障速度が10バイト(MB)/秒
数値が大きいほど読み書きの速度は速くなり、現在の主流はClass10になっています。Class2を見かけることは少なくなりましたが4や6は今でも販売されているので、ラベル表示をよく確認し、動画撮影用のSDカードはなるべくClass10を選ぶようにしてください。
UHSスピードクラス
スピードクラスの上位規格になるのがUHSスピードクラスであり、名称はUltra High Speedを略したものです。SDカードにはアルファベットの「U」に数字を入れたロゴが表示されており、スピードクラスと同様に最低保証速度との関係があります。
・UHS Speed Class1:読み書きの最低保障速度が10メガバイト(MB)/秒
・UHS Speed Class3:読み書きの最低保障速度が30メガバイト(MB)/秒
UHSスピードクラスではフルHDなどの高画質動画も難なく撮影できますが、カメラ本体もUHSスピードクラスに対応していなければなりません。どちらか一方でも非対応な場合、動画撮影時には1段階下のスピードクラスで読み書きが行われます。
ビデオスピードクラス
4Kや8Kなどの高画質動画を撮影する場合、ビデオスピードクラスに対応したSDカードがおすすめです。ビデオスピードクラスは「V+数値」で表され、以下の5段階に分かれています。
・V6:読み書きの最低保障速度が6メガバイト(MB)/秒
・V10:読み書きの最低保障速度が10メガバイト(MB)/秒
・V30:読み書きの最低保障速度が30メガバイト(MB)/秒
・V60:読み書きの最低保障速度が60メガバイト(MB)/秒
・V90:読み書きの最低保障速度が90メガバイト(MB)/秒
HD画像やフルHDの場合はV6のスピードでも支障ありませんが、4K動画撮影では最低でもV10が必要であり、推奨規格はV30以上になります。8K動画になると最低V60は必要でしょう。
ちなみに高画質動画にはそれなりの記憶容量も必要なので、転送速度だけに注目しないよう気を付けてください。
カード容量
SDカードの容量は見た目のサイズだけでは判断できず、規格によって以下の3種類に分類されています。
・SDカード:2ギガバイト(GB)まで
・SDHCカード:4ギガバイト(GB) ~32ギガバイトまで
・SDXCカード:64ギガバイト(GB)以上
一般的には上記3種類を「SDカード」と総称しており、下位規格への互換性があるため、SDXCカードに対応する映像機器はSDカードやSDHCカードの読み書きも可能です。
動画の種類にもよりますが、SDカードの規格では10分程度の動画撮影でも直ぐに容量が一杯になるため、最低でもSDHCの規格をおすすめします。4Kや8Kなどの高画質動画や、旅行先でさまざまな動画撮影をする場合にはSDXCカードを選ぶとよいでしょう。
カード容量の単位に注意!
殆どのSDカードには容量がもっとも大きく表示されているので、SDHCやSDXCなどの規格を覚えていなくても容量を間違えることは殆どありません。しかし今でも動画撮影に不向きな2ギガバイト以下のSDカードが販売されているので、単位を見間違えないよう十分に注意にしてください。例えば512MBと512GBのように、数字は同じでもメガバイト(MB)とギガバイト(GB)では保存容量が1,000倍以上違います。
動画撮影におけるSDカードの選び方
SDカードについて容量や転送速度の違いを解説しましたが、実際に購入する場合はどのように選ぶべきでしょうか?
「高画質で動画撮影したいから容量が大事」という方もおられると思いますが、再生や編集環境によっては画質を落とし、容量に見合ったSDカードを選ぶ必要もあります。またSDカードの品質や劣化に関係したトラブルも想定されるため、ブランドや耐久性による選び方も考えておきたいところです。
動画の種類や撮影時間から選ぶ
高画質な動画はデータサイズも大きいため、SDカードの容量にも余裕が必要です。また書き込み速度(記録速度)が遅ければ途中で撮影が止まってしまうこともあるので、転送速度にも注意しておきたいところです。例えば4K動画の場合、撮影時間の目安は以下のようになります。
4K動画の撮影時間の目安
・64ギガバイト(GB):約1時間52分
・128ギガバイト(GB):約3時間44分
・256ギガバイト(GB):約7時間28分
・512ギガバイト(GB):約14時間56分
自宅近くの撮影であれば直ぐにPCへデータを移してSDカードを空にできますが、旅行先で動画撮影する場合にはSDカードに撮りためることになるので、128GB以上の容量があれば安心といえるでしょう。
データの転送速度はビデオスピードクラスを選び、最低でもV60の規格をおすすめします。
PCの性能などに合わせて選ぶ
せっかくの8Kや4K動画でも、テレビやPCが非対応であればフルHDなどに下位変換して再生されることになります。細かなディテールなどは鮮明に再現されますが、本来の画質ではないためカメラの性能を活かしきれない結果になってしまいます。
また高画質動画はデータ量も膨大なので、スペックの低いPCでは簡単な編集でもかなり時間がかかります。「最初からHD画質にしておけばよかった」ということにもなりかねないので、処理能力の高いCPUや、メモリ容量にも余裕のあるPCが必要でしょう。
ただし近い将来にPCやテレビの買い換え予定があれば、後で一気に編集~再生もできるので、ひとまず高画質で撮影してSDカードやハードディスクにストックしておく選択肢もあります。
ブランドや耐久性から選ぶ
SDカードは読み書きを繰り返す度に劣化が進み、やがて寿命を迎えます。長期間の放置でデータが消失することもあるため、年単位のデータ保存には向いていません。
しかし中には長寿命のSDカードもあり、ドライブレコーダーや防犯カメラなど、読み書きサイクルが激しい映像機器には耐久性の高いMLCチップのSDカードが使われています。
普及版となるTLCチップの読み書きは1,000回が上限となっていますが、MLCチップであれば1万回の読み書きにも耐え、寿命もTLCチップの10倍です。
ただし、MLCチップが搭載されているかどうかはパッケージやラベルを見ても分からないことが多いので、「SDカード MLC」のキーワードで検索し、ヒットしたものを選ぶとよいでしょう。実際に検索するとTranscend(トランセンド)やSanDisk(サンディスク)、東芝や日本サムスンといったブランドが表示されるので、耐久性や信頼性を重視する場合にはメジャーブランドのSDカードをおすすめします。
まとめ
動画は撮り直しできないケースが多いため、撮影時の準備は万端にしておきたいところです。しかしバッテリーやケーブル類などに気を使っていてもSDカードの性能に無関心であれば、思わぬエラーで動画撮影中断ということもあるでしょう。
せっかくの撮影機会を無駄にしないよう、SDカードは「容量」「速度」「耐久性」を基準に選びましょう。